2019年10月10日木曜日

灼熱の甲子園 注目試合でなくても長い行列

 最寄り駅が阪神甲子園駅だった四半世紀以上前、夏の甲子園で試合を見たことがある。どこのチームか忘れたが、あまり評価が高くない同士の1回戦第4試合で、簡単にネット裏に入れ、浜風を浴びながらゆったりゲームを見た。そんな軽い気持ちで首都圏からのぞみに飛び乗り甲子園に出かけ、そこで見かけたのは、話題があまりないチームの試合でも入場を待つおびただしい数のファンの姿だった。


スターも不在


 過去の記憶から見ようと思ったのは地元以外が出場する午後3時半からの第4試合。この日は福井の敦賀気比と西東京の國學院久我山。いずれも優勝候補やダークホースに挙がっておらず、星陵の奧川や大船渡の佐々木のようなスターがいるわけでもない。第3試合は地元智弁和歌山が登場し満員となるだろうけど、試合が終わればすくはずと判断した。

阪神パークの跡地にららぽーと


 午後2時半、阪神甲子園駅に着いた。もう何十年も見てないが、ホームの上に大きな屋根があるなど雰囲気が大きく変わっていた。すぐに甲子園に向かわず、球場近くにあるららぽーとに向かうことにした。炎天下の中、帽子がないと危険と思ったからで、到着するとすぐにH&Mを見つけ500円ちょっとの野球帽を買った。おやっと思ったのは、甲子園近くに大型店をつくれるこんな広い敷地ってあったっけ?だった。入り口近くの英語の看板に、かつてレジャー施設があったと書いてある。そうだ、阪神パークがあった場所だ。プールに出かけたことがあるが、少子高齢化の今、もたなくなったんだろうなあ。

高速高架下にたくさんの入場待つ客


 帽子をかぶり、ポカリスエットを持って球場に向かう。好天に恵まれ猛烈な暑さだ(当日37度ぐらいあったようだ)。レフトスタンド下からチケット売り場のネット裏に歩いて見てびっくりした。チケット売り場前いっぱい入場を待つ客があふれかえっており、球場に隣接する阪神高速の高架下から甲子園の駅まで列が続いているのだ。数千人?いや万はいるかな。「第3試合が終わり客の数を見てチケットを販売するかどうか判断」とのアナウンスが流れる。わざわざ来たのに入れないという最悪の事態もあるのかなと不安になる。


外野チケット500円

販売が始まらないまま3時半の試合開始時間が過ぎた。列に並ぶと暑そうなので、風が通る高架下の日陰でアナウンスを待つ。4時前になり、よく聞こえなかったが、チケット販売が決まったらしく、長い列は窓口前に進んだ。客のはけ方は明らかに外野の方が早い。かつてネット裏に入ったことは忘れ、確実には入れなそうな外野席に向かうことにした。チケット売り場に並ぶと、大人500円、子供100円の料金が見えた。子供客が多いなと思ったけど、この安さなら連れてきやすいわ。高架下で待っていると、小学生ぐらいを連れたママやバアバを結構見かけた。この暑さ、関西の人はそれほどつらくないのかな。


空きがあるレフトスタンドへ


 チケットを手に入れると、時計と反対回りに外野側に行き、右中間辺りから入場する。建物内部はもっと古ぼけて汚いイメージだったけど、かなりきれいになっている。スタンドに出ると、レフトスタンドはまだ空いているとのアナウンス。バックスクリーンの前方下通路を越えレフトスタンドに入る。確かにまだ空きがある。

めいっぱいの西日


 階段を上がっていくと、通路から2、3席分空いているベンチがあった。早速席に座り、スコアボードを見ると、3回の裏だった。座ってみてレフト側が空いている理由が分かった。何せ暑いのだ。西日を目いっぱい浴びる。銀傘に覆われた内野側は日陰となり、1塁側も背中から西日を浴びるもののスタンドがある程度、日差しを遮っている。それに対し、レフト側は何も遮るものがなく、真正面から強い日差しが飛んでくる。

スタンドはまるでビーチ


 試合は敦賀気比が圧倒的リードだ。先行敦賀は毎回のようにランナーを出し、3回までに8点。これに対し、國學院は1回に2点取ったものの、反撃は続かない。

 そんな試合だから、あまりグラウンドに興味がわかない。回りを見回すと、男の姿はビーチとは言わないがそれに近い状態。Tシャツというより、ランニング、裸もいる。対して女性陣は老いも若きも1ミリも焼かないという意思が感じられるほど、帽子をかぶり全身を覆っている。

甲子園も「こと消費」


 目の前に座っている男性1人(たぶん30代)に左右に若い女性(たぶん20代前半)のトリオ。ぺちゃくちゃしゃべっているが、いずれも会社の話のようで野球の話は出ない。唐揚げにビール、あるいはハイボールを飲んでいる。確かに美味しそうだが、この環境だと野球を見るというより炎天下のバーベキューみたいだ。


 回が代わって、守備についた際、ライトの守備位置近くにビニール袋が飛んできた。外野手は袋を拾うと、おしりのポケットに突っ込んだ。「あの子、ごみを自分で片付けたよね。こういうさわやかな姿が見られるのは甲子園に来たからだよね」。うーん、そりゃそーだけど。「臨場感あるねえ」と男性。当たり前だろ。よーするに高校野球が好きというより甲子園にいるという「こと消費」が目的に見えた。

外野は遠いよなあ


 プロ野球はネット裏近くでしか見る気はしないが、高校野球も外野で見ると、やっぱ何をやってるか分からない。自分が野球をやっていたときもそうだったなあ。ライトを守っていてあまりにボールが来ないので半分寝ていてセンターの上級生から注意されたことがある。

男子野球部員が踊ってる


 毎回のような得点で盛り上がる3塁側の敦賀気比をふと見てみた。レフトスタンドからはアルプススタンドは案外近い。ひもをたすき掛けした野球ユニフォーム姿の男子高校生が踊ってる。いわゆるダンスとも違うのだが、応援団の応援光景とも違っており、おそらく補欠の選手たちだろう。踊りはとてもこなれており、昨日今日憶えたものではないはずだ。

補欠だからといって


 つまりあの子たちは、遅くとも甲子園出場が決まったときから、踊りを練習しているに違いない。あるいは県大会からか。しかし、敦賀気比のような野球学校では多くの選手が中学の時、スター選手だっただろう。そうした選手がベンチ入りできないからといって、応援踊りの練習?それはちょっとかわいそうではないのか。踊るために野球部に入ったわけではないのだから。その横にまだ小学校低学年ぐらいの男が同じ格好で同じ踊りをしていた。前に座ってるトリオも気づき「かわいいー」

凍ったオレンジジュース


 それにしても、レベルを超えた暑さだ。水分補給が必要と、ビール売り子のおねーさんを呼び止める。凍ったオレンジとカルピスを売っており、オレンジを購入した。内容表示を見ると塩分などが入っており、ポカリなどと同じような飲み物。この冷たさにはかなり助けられた気がする。

7回終わって退散 14対2


 意気上がる敦賀に比べ、國學院はランナーもあまり出ず、静かなままだ。やっと出塁すると、ブラスバンドや応援団が立ち上がり、1塁側アルプススタンドが真っ赤に染まって見えた。ただ、反撃にはならず、逆に敦賀が追加点。試合としての興味はほとんどなくなった。

 7回に敦賀が4点追加し14対2となったところで退散することにした。時間は午後6時を回っているが、西日がまだきつい。回りを見回すともう観客は半分ぐらいか。ネット裏もがらがらになっていた。

翌日の試合待つ客が行列


 暑かったという感想ばかりで、甲子園を出た。球場外側を反時計回りに回って、甲子園駅まで歩いた。すでに翌日の試合を待つ客が行列をつくっていた。徳島鳴門と仙台育英が第1試合だが、そんなに満員になるのかなあ。「お疲れさん」と思いながら、駅に入った。まだ帰る客は少なく、三宮行き電車も混んではいなかった。その後、ネットで試合結果を見ると19対3になっていた。

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