2018年12月29日土曜日

トリプルアクセル成功の23歳細田に大絶賛 フィギュアに新世界の可能性

 初優勝を遂げた坂本花織をはじめ上位4人が220点を超えるというハイレベルの戦いになった2018フィギュアスケート日本選手権の女子。フリーでトリプルアクセルを2度成功させた紀平梨花ら、ミスが少ない熱い戦いは結構、迫力があったが、最も引きつけられたのは、23歳の細田采花(関大)がトリプルアクセル(3A=3回転半ジャンプ)を2度決め、自己ベストの合計185・74点をマークしたことだった。

 彼女はショートでも決めており、計3度成功させた。これは浅田真央、紀平に次いで世界で3人目。おまけにフリーの最初の3Aはダブルトゥループがついたコンビネーションジャンプになっていた。17年2月に初成功という遅咲きの技。このことは4回転ジャンプを決めるロシア勢のように、体が子供で少女ですらない選手の世界になっていた女子フィギュアに、新たな方向性を示すものではないのか。

女性らしい体つき


 細田はこの日のフリーの演技が終わると、歓喜のあまり両手で顔を覆った。「嬉しいのひと言。このためにやってきた。自分が一番ビックリしている。いいクリスマスを迎えられる」と語ったという。小学校3年生からスケートを始め、高校1年から宮原知子や紀平も指導していに浜田美栄コーチに師事。2016年全日本選手権15位になったぐらいで大きな実績もない。身長は155センチ。均整の取れた体つきで、それなりにバストもある女性らしい体つきだ。宮原や紀平がようやく子供から少女の体つきになったのに比べ、とても大人の選手だ。

ロシア勢登場で短命の世界に


 今の女子のフィギュアは浅田、金妍児時代を経て若いロシア勢が登場してきたことで大きく変わってきた。15、6歳でジュニアからシニアにあがり、1、2年活躍した後、18歳になると消えてしまう。18年平昌五輪の覇者ザギトワは,シニアに上がった最初のシーズンに五輪金メダル。わずか10カ月後のグランプリファイナルで紀平に敗れ、ロシア選手権では5位に沈んだ。おそらく彼女が国際舞台で活躍することは厳しいだろう。五輪から身長が7センチも伸び,バランスが悪くなったらしい。ザギトワの前の世界選手権覇者メドベージェワは五輪2位の後は、グランプリファイナルにも出場できず,ロシア選手権も7位に惨敗した。

4回転軽々ジュニア勢、子供の体


 2014年ソチ五輪を振り返ってみると、金妍児を破って優勝したアデリナ・ソトニコワ、5位に入ったユリア・リプニツカヤ、いずれも翌シーズン以降、表舞台から消えてしまった。リプニツカヤは五輪当時15歳だった。ロシアで20歳を過ぎたトップクラスの選手は、トリプルアクセルを跳ぶ22歳のエリザベータ・トゥクタミシェワぐらいしかいない。

 ロシアはザギトワ、メドベージェワに代わるジュニア勢がすでに台頭している。ロシア選手権の上位4選手はいずれもジュニア。うち2人は男子並みに4回転ジャンプをぴょんぴょん飛ぶ。体つきは小学生と変わらない。来年の世界選手権は年齢的に出場資格はないらしいが、再来年にはザギトワらに取って代わるのは間違いない。過去の五輪選手がそうだったように。

20歳過ぎてもあらたな技の可能性


 しかしこんな世界は異常だ。15,16歳でトップとなり、2年で引退なんて。誰が考えても早すぎる。女性の体になる前でしか活躍できないなんて、競技としてあり得ない。そこで細田だ。彼女は22歳でトリプルアクセルを飛んだ。つまり、20歳を過ぎても、トップの技ができる可能性があることを示したのだ。彼女はステップやスピンさらには他の3回転ジャンプで高い点が取れるほど一流選手ではない。

 だが、坂本、紀平、宮原、さらには不調で15位に沈んだ本田真凜、彼女らが20歳を過ぎてスランプに陥っても、まだまだ復活できる可能性があるといえるのだ。

海外からも注目


 全日本の話題はもちろん坂本、紀平、宮原の世界選手権派遣が決まった上位3人が中心。だが、3Aの細田の活躍は8位にもかかわらず大きく賞賛され、米国の記者がツイッターで言及するなど、国際的な注目も集めている。おそらく「子供」「少女」ではなく「女性」の美しさが評価される-そんな希望を見いだしたに違いない。「女性」スケーターが3Aや4回転ジャンプで競う世界。まさに本当のフィギュアの世界になることを。

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