2019年4月10日水曜日

昨年のアカデミー主演女優賞、スリービルボードを見た

 何とも強烈なヒロインの登場だ。娘をレイプされ焼き殺された悲しい母親像とはまったく無縁。警察に火をつけるわ、何の証拠もない人間を娘の敵と殺しに行こうとするわ、とにかく無茶苦茶。だけどこんなヒロインをなぜ登場させたんだろう。強い女を描くという風潮は分かるけど、こりゃすごすぎる。

http://www.foxmovies-jp.com/threebillboards/

 ほぼネタバレご注意



ヒロインは主演女優賞


 ストーリーはミズーリ州の田舎町の町外れにある3枚の看板(スリービルボード)に新たな広告が書かれたこときっかけに展開していく。内容は娘を殺害した犯人が捕まえられない警察を非難する内容。広告主はもちろん母親(ミルドレッド・ヘイズ)だ。この役を演じたフランシス・マクドーマンドは主演女優賞。
 困ったのは警察署長だ。ミルドレッドに外すよう依頼するが彼女は相手にしない。この署長さんはすい臓がんで余命幾ばくもないという困難を抱えていた。

助演男優賞も


 しばらくして署長が自殺する。特に怒りを募らせていた署員のジェイソン・ディクソン(サム・ロックウェル=助演男優賞を受賞=)は看板を請け負った広告会社に乗り込み、社長を2階から突き落とし、重傷を負わせる。それを見ていた新署長によって、ディクソンは首にされる。
 その夜、ビルボードが何者かによって燃やされる。そのことを知ったミルドレッドは、腹いせに警察署に火炎瓶を投げ込むが、署内にはディクソンがおり、署長が残した手紙を読んでいた。

ラストは


 ディクソンは大やけどを負うものの一命は取り留める。署長の手紙で改心したディクソンは退院後、飲み屋で、男が「女をレイプして焼き殺した」という話を聞き、わざと顔をかきむしりDNAを採取する。結局、男は娘の殺害当時、国外にいたことが分かり、話は振り出しに戻る。
 看板に火をつけたのも、夫がやったと話し、警察とは関係なかった。ミルドレッドとディクソンは「娘じゃなくてもやったことは同じ」と銃を持って、男が住むアイダホ州に向かうところで映画は終わる。さすがにそんな無茶はしないだろうということを示唆して。
よく練られたストーリー

 文字にしてしまえば、これだけのことだが、ストーリーは非常によく練られている感じ。ミルドレッド、ディクソンともに暴力をいとわない激しいシーンが随所にあり、だれることがない。署長の自殺、さらには広告の経費が払えなくなり窮地に陥ったミルドレッドを救う匿名の寄付は、署長が贈ったものだという意外な展開も明らかにされるなど、飽きさせることがない。

プワーホワイト


 とはいえだ。どうも救いがないストーリーだ。おそらくニューヨークも海外も無縁な人々。プワーホワイトと呼ばれる層に位置し、黒人、ヒスパニック、LGBTみーんな差別の対象という生き方。女性がレイプされてもそれほど罪という雰囲気もない。警察の暴力もよくあること。そんな人々の中で展開し、犯人は分からずじまい。やっぱりどこかすっきりしないのだ。

ヒロインの形相


 もっとも、アカデミー賞にノミネートされる作品、つまりは一応は評価が高いとされる映画ではこの種の作品がすごく多い気がする。化粧っ気もなく、いつもひっつめ髪でけんかを売ってるようなミルドレッドの形相。アメリカでの女性に対する見方、ってこうなのかしら。分かるような気もするけど。

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