2018年11月17日土曜日

一挙9枚のフェルメール 大胆な試みだ

 もともとフェルメール展を見る予定ではなかったんです。平日でも相当な混雑が予想され、とりあえず同じ上野で開かれているムンク展を見に行ったのです。その帰りのこと、フェルメール展が開かれている上野の森美術館の前を通ると、行列が消えています。チケット売り場前で「入れますか」と聞くと、午後3時の回なら入れます。このとき、午後4時過ぎ、「時間がないのでは」と聞くと、「入ってしまえば何時間でも終わりまでいられます」との説明。それならと2700円という高額料金を払いました。日時指定入場制という入場制限はあったけど、時間制限はなかったのね。

 世界でわずか35点しか作品がないフェルメール。そのうち9点を一挙に見られるなんて、かなり大胆な試み。というか、ファンにはたまらない幸せでしょう。日本にも相当、ファンがいるはずで、入場制限も致し方なし。おそらく土日祝日は恐ろしい状態になっているでしょう。それに作品自体が小さいし、マジまともに見られるのか正直、おっかなびっくりの入場でした。


全員に音声案内サービス 2700円だもん


 チケット買って入ると、いきなり音声案内の機械とイヤホンが渡されました。ふつーは希望者だけだし、場合によっては有料のケースもありますが、さすが2700円という高額展です。それぐらいはサービスしてくれないと。

フェルメールの絵はどこ?


 展示場に入ってみると、暗い室内、一枚の絵に10~20人が群がって見るというおなじみの光景です。最初の絵を見ながら、音声案内の石原さとみの声を聞いていてふと思ったのが、「あれ、フェルメールの絵はどこにある?」でした。
 入り口で渡されたパンフのような小冊子を見ると、フェルメールの絵は40番台。なのにこの室内には40番台の絵は一切ありません。展示されているのは、いずれも知らない画家ばかり。かろうじてヤン・ステーンという言葉を知ってるぐらいです。それも詳しくは知りません。フェルメールと同時代のオランダの画家の作品群が展示されていますが、食指はわきません。これらの絵を一挙にすっ飛ばし、フェルメールの展示へと向かいます。ちょっともったいないけどね。
 

ほかの作品はすっ飛ばした 最初の絵は宗教画


 廊下のような通路を渡ってフェルメールの展示室へ。最初の展示が「マルタとマリアの家のキリスト」。ナレーションを聞くと、キリストを中心にした宗教画なのですが、見ただけではまず分からない作品。宗教画を書いていたの?と思う一方で、まったくそうらしくないというのも面白いです。


壁一面に7枚の絵 20~30人が群がって


 続いて、壁一面にずらりとフェルメール作品が並びます。「ワイングラス(日本初公開)」「手紙を書く女」「リュートを調弦する女」「真珠の首飾りの女」「赤い帽子の娘(日本初公開)」「手紙を書く婦人と召使い」。
 これだけ並ぶとかなり壮観です。しかし、さほど大きくもない一つの絵に、オランダ作品群よりさらに多い20~30人に群がり、背が低いとかなり見えにくそう。係員が少しずつ歩いてと小さく声を上げますが、みんな音声案内を聞いており、終わるまで動くに動けません。

5枚はすでに見てました 記憶ないけど


 ふと記憶を呼び起こすと、「赤い帽子の娘」と」「手紙を書く女」は米ワシントンのナショナルアートギャラリーで、「リュートを調弦する女」はニューヨークのメトロポリタン美術館でそれぞれ見たことがあるようなのです。「真珠の首飾りの女」だけはドイツのベルリン国立美術館で見た際、かなりお気に入りとなり、A4ぐらいのポスターを購入し、今も飾っていますけどね。「ワイングラス」もこのときに見ていたようでした。つまり5つは見ていたことになりますが、世界の3つの美術館を回った結果であって、一度に見られるなんて、かなり幸せかもしれません。


「牛乳を注ぐ女」がすごい、「真珠の首飾りの女」が一押しだったけど


 かなり精密な「手紙を書く婦人と召使い」を経て、トリを飾るのが、「牛乳を注ぐ女」。これまで見た中では「真珠の首飾りの女」が一番と思ってましたが、絵のすごさという点では「牛乳」の方が上かな。あの時代、光と影をあんな風に見事に描けるなんてとにかくすごい。

誰が買って、どう保管維持?


 もっとも、庶民の日常を描いたこの種の絵って、いったい、誰が購入したんだろう。宮廷画家や宗教画家の絵なら、王宮や教会がつぶれない限りそれなりに保存されていくだろうけど、一般の商家などが、フェルメールの作品を購入した後、それほど厳重に保存したとは考えられません。今のような巨額な価値はないでしょうから、購入商家が没落すれば単なるゴミ。生涯35枚じゃとても画家として食べていけないし。いったい、どうしていたのかな。

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