2018年7月6日金曜日

納得できない思いも 評価しにくい万引き家族

 カンヌ映画祭で最高作品賞であるパルムドールを獲得した「万引き家族」を見た。万引きなどという特殊な世界を取り込むことで、特段面白くもない家族の日常を延々と描いて、飽きさせないというのは、是枝裕和という監督さん、相当な手練れのように感じた。(パルムドール監督だもん、当たり前か)。ただ、こういう映画が芸術作品として評価されるのか、とやや納得できない思いも残った。ましてやフランス人に分かったのかなあ。


 ネタバレとなるので以降はご注意。


「家族」関係が分からない 樹木希林はどういう立場?


 見落としただけかもしれないけど、何だか釈然としないことがいくつかある。樹木希林のばあさんは、リリー・フランキーと安藤サクラとどういう関係にあるのか。松岡茉優が別れた夫の孫ということは、再婚した夫の子供に金を無心に行くことで分かったが、それ以上のことは分からなかった。だから、なんで一緒に暮らしていたのか、謎になるばかり。


どこまでも推察でしかない


 リリー・フランキーと安藤サクラの関係もそう。DVに遭っていた安藤とフランキーが結託して夫を殺したようだが、安藤が取調中に「判決」という言葉を出したことで、過去に起き、フランキーが服役したことまでは推察できた。病死した樹木希林の死体を埋めた罪は「あの人は前があるから」と安藤サクラ1人がかぶったこともなんとなく想像できた。でも、それは想像の域を出ておらず、どこかで明示されたわけではない。

 男の子のこともそうだ。刑務所の面会で安藤サクラは「松戸のスーパー駐車場で」誘拐したことを本人に言ったが、それはいくつぐらいで、どういう動機か全く分からない。小さいころならお母さんと呼ばせているだろうし、でも、男の子はおばさんと呼ぶ。取調官「子供ができないのは分かるが」というセリフで動機を推し量れというのだろうか。

偽物の家族の崩壊って?


 つまりは子供2人を除いて大人4人が何のつながりで集まったのか、よく分からないままストーリーが展開して、家族が「崩壊」していく。そこがどこか気持ち悪いのだ。
 もっとも是枝監督はそんなことはどうでもいいと考えていたかもしれない。家族の絆などというものが血縁があろうとなかろうと、できるときはできるし、壊れるものは壊れると言いたかったのだろうから。

なぜか麺類を食べてばかり


 ところで、彼らが集まったとき、なぜか麺類をずるずるすするシーンが多い印象を受けた。最初に少女を連れてきたときはうどん(たぶん)。クリーニング店を首になった安藤サクラがリリーフランキーにセックスを迫る場面はそうめん。フランキーと少年が別れる前に食べるのはカップ麺。おむすびでも茶碗のご飯でもなく、麺なのだ。そこに何か意味を持たしているのだろうか。ずるずる食べる音は決して美しいとはいえない。

あっぱれ、安藤サクラ


 松岡茉優を風俗嬢にして、下着で登場させたり(上半身だけだが)安藤サクラとふらんきーのセックスシーンで、長々と安藤のヌードを見せたり、今どきの映画としてはサービスショットも用意されていた。これも是枝のうまさなのだろう。それにしても、30ちょっと過ぎたばかりなのに安藤サクラのボディが熟し切っていたのにはびっくり。どうみても40代、この映画の役をこなすために体重を増やしたのかしら。だったら「アッパレ」だ。

 ただし、カンヌの審査委員長を務めたケイト・ブランシェットが絶賛した「泣き方」ってどこのシーンのことか結局、分からなかった。

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