2018年1月7日日曜日

これはいかんよ、すみだ北斎美術館 常設展示がレプリカだけとは

 一昨年11月にオープンした東京のすみだ北斎美術館に行ったのは昨年5月。それぞれ皆さんの評価はおありでしょうが、私にとっては×以外の何者でもありませんでした。わざわざ足を運び、お金を払うのは本物が見られるからです。レプリカという偽物しか展示しないのであれば、レプリカ美術館と銘打つべきでしょう。実際にそういう美術館もあります。墨田区はなぜこんなものをつくったのでしょうか。墨田区の税金でしょうけど、区の皆さん、本当にご愁傷さまです。ったく。

企画展は本物、だから1000円チケット


 JR両国駅前の両国国技館、江戸東京博物館からほど近い場所、隣の錦糸町駅に向かう途中にすみだ北斎美術館があります。金属のようなもので覆った壁面がやたら目立つデザイン。世界的建築家の妹島和世氏の作だそうです。でも、正直、外観のデザインはどーでもいいんです。中身が充実し、次に使いやすいかどうかです。
 1階のチケット売り場では常設展400円か企画展含む1000円かが選べます。ただし、常設展はレプリカと伝えられます。常設がレプリカ?そんなことがあるの?ルーブルがオルセーがレプリカだったら?客は行かないよね、物好き以外は絶対。企画展は「てくてく東海道 ― 北斎と旅する五十三次 」と書いてあります。「そちらは本物」と聞いて迷わず1000円コース。疑問を持ちつつもそこまでは問題なし。


小さな浮世絵はよく見えず


 しかし、エレベーターしか移動手段がないと知り、ややびっくり。今日は平日だからいいけど、土日は大変そう。最初は4階に上ります。よく考えてみると、ワンフロアがオフィスのちょっと大きめ会議室ぐらいしかありません。これで、どう展示と思ったら、大きめの百人一首ほどのサイズしかない東海道五十三次が並んでいます。ガラス張りの展示スペースに。色あせを防ぐためでしょう、室内は暗め。だから、小さな浮世絵は見にくいし、最初はゆっくりだったのが、みんな飛ばして見るようになっていきます。最後の方になると、昇亭北寿(よく知りません)の「東都日本橋風景」という大判錦絵。北斎以外の作品が並んでいたりして、訳の分からないまま企画展が終わります。

悲しきレプリカ「赤富士」「神奈川沖浪裏」


 あっという間に見終わって次は常設展示。錦絵の作り方など展示があります。博物館風ですな。でも、その周囲にあるのはみーんなレプリカです。展示を見ていると、富嶽三十六景で赤富士とよばれる「凱風快晴」や「浮世絵と言えば、これ」というほど世界的に有名な「神奈川沖浪裏」が飾られてました。大型の錦絵ということらしく、大きさもしっかりあり見栄えもします。外国人観光客がみーんな写真を撮っています。でもレプリカです。タッチパネルを触ると富嶽三十六景の画像が見られる情報端末もありました。やっぱり素晴らしいものばかり。でも、この美術館では一つも見ることができないのです。葛飾北斎が90年にも及ぶ長い生涯のうち、そのほとんどをこの地域で過ごしたことから作られた美術館なのにです。多くの客が見ていたのは葛飾北斎のリアルな人形。晩年の北斎が絵を描く姿が再現されていますが、それがどーしたとしか言えません。


区別つかないからこその本物展示


 しかしです、多くの客が見たかったのは本物のはずです。錦絵はいわゆる印刷物。それをコピーで見せるなんて、恐るべき発想、恐るべき馬鹿にした態度にしか感じません。先日、横浜市の神奈川県民ホールで棟方志功作の版画がカラーコピーと入れ替わっている事件が発覚しましたが、いつすり替わったのか分かっていません。それぐらい微妙なもの。だからこそ、美術館が責任を持って「本物」を展示する必要があるのです。
 「富嶽三十六景は本物は持ってないの?」と係りの人に聞きました。すると、ほぼ全部あります」「傷まないようにするために1カ月展示すると1年ぐらい休ませないといけないので展示していません」。しかし、オープンしてまだ半年ではないですか?


外国人観光客に失礼


 平日のせいか、お客さんの多くが外国人でした。レプリカと知ってか知らずか、赤富士の写真を撮っている人を多く見かけました。レプリカと分かっていたら、写真は撮らないよなあと思います。少し前、TBSの番組で地元で建設反対運動が起きていることを紹介していました。地元の誇りなのになぜ?と思ったものですけど、反対の人たちはどういうコンセプトで運営されるのかご存じだったんでしょう。こんな中途半端な存在なら、地元の人への活用を第一に考えるべきでしょう。外国のお客様にも失礼です。

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